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日別アーカイブ: 2019年3月15日

「生と死と」想いは募る

清水透(慶応大学名誉教授)が東京・中日新聞に連載している「インディオの村通い40年<いのち>みつめて」が2月4日から始まったが、平易な文章にメキシコの辺境の村のインディオとの交流、娘さんの白血病発症と死、そして日本とインディオの村を往還して見えてきたことについて書いている。以下はご本人の承諾を得てメールを下部に転載する。

北岡さん、連載、最後までお付き合いいただきありがとうございました。


> 「生きる」意味をぼくも真剣に考えています。
> ぼくらは真帆さんの3倍も生きている。
> でもぼくらは「幸せ」で真帆さんは「不幸」だったのか。(以上3行はぼくが送ったメール)

そこなんですよね。よく人は善意ではあれ「真帆さんの分も生きなきゃ」などと
「慰めて」くれました。交通事故や殺人ならまだしも、「生き切った」と信じた
い遺族の気持ち、経験者でないとなかなかわからないものです。

娘自身、旅立ちの2週間前、最後の一か八かの治験治療に入る直前、判読できる
最後の文章を残しています。
「・・・・別にこれを最後の文章にしてみなさんにあいさつしているつもりでもないです。・・
骨髄移植のときダメになったとしても、後悔していなかっただろうし、今度も一緒です。
・・・本気で人生どれ程生きて充分なことはなくて内容だと思えるようになったと思う。
・・・やり残していることいっぱいあるけど、もしかして私って、普通の人の味わえる楽しい
ことや嬉しいこと、やらせていただいたのかもしれない。だって楽しかったもの、いつ思い
出しても。私はいつだって自分が好きだったよ。自分が得意だった。思い上がりかもし
れないけど、たくさんの人に愛されていることを実感してきた。運もよかったし。・・・」

僕はこの文章から、いろいろ学ばせてもらいました。人間、個として生を受け、個として旅立ってゆく。その「孤独」をしっかりと引き受けている姿を、娘に感じます。

3月中はずっと東京におりますので、また一杯、ご一緒できれば幸いです。…(以上、清水透からのメール)

ぼくは18年前、突如、LAのオフィスに現れた小柄な中年の男の姿を思い浮かべた。知人の紹介で会ってほしい、との電話があり、ロサンゼルスのオフィスにやってきたのが清水だった。インディオの研究をしているという。文化人類学者かと思ったが、専門は歴史学者だそうだ。

娘さんの真帆さんが白血病で逝ったが、生きる最後まで病床で骨髄移植の登録運動を続けていたという。当時、白血病の治療法は血液型などのタイプが合う人からの骨髄を移植する以外に助かる方法は無かった。しかし骨髄提供を登録してくれる人は微々たる数だった。娘の遺志を継いで骨髄バンク登録のキャンペーンにやって来たそうだ。

真帆さんは、この骨髄の提供を呼び掛ける運動を病床から続けて、23歳という女性としてもっとも美しい年代に逝った。清水は骨髄登録を訴える演劇グループを率いてLAにやって来たという。2001年8月の初旬だった。

リトルトーキョーの日米劇場で上演された芝居は「友情」。白血病に倒れ、抗ガン剤で毛が全部抜けてしまい、禿を恥ずかしがる若い女生徒をクラスの仲間が全員丸坊主になって「これで同じじゃん」とばかり病床の彼女を応援、励ます、というシカゴの高校であった実話を演劇にしたそうだ。

「親父としてなんとか真帆の呼びかけを続けたい」小柄な清水の目は哀しみを越え光っていた。ぼくは協力を約束し番組で紹介した。公演は2001年8月11、12日だった。1か月後、911同時多発テロが発生した。

ぼくは帰国して清水と再会した。彼の蓼科の山小屋のような別荘にも泊めてもらい焚火を囲んで二人だけで深夜まで語り合った。「生きる」ことと「死ぬ」こと。真帆さんの死をめぐって話していたところへ野生のタヌキが忍び寄ってきてぼくらの会話を聴いていた。

もちろんその時、ぼく自身がガンに罹るんなて思いもしなかった。でも清水は「生きること、生ききること」に真剣で、機会を作ってメキシコのインディの村に日本から通っていた。ある意味で不思議とも思える執念を実感した。

「当事者しか分からんもんね」清水は言った。真帆さんの死のことか。ぼくは沈黙したまま頷いた。連載は、常に搾取され痛めつけられてきたのはマイノリティ(少数者)であり、貧しく生きてきたことを淡々と書き綴っている。清水は彼らに心底共感していた。その陰に思わぬ”事実”が隠されていたことを後日、知った。

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北岡和義事務所

東京都在住

E-mail: kazuyoshi.kitaoka@gmail.com

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