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黄金のワラ

ぼくが肝臓ガンにかかった、という事があちこち伝わるといろんなメールや電話が届いた。直接見舞いに来てくださる方もいる。2月16日は東京から見舞客4人がやってきた。熟女3人、間もなく高齢者層に入るだろう男性が一人。一人は有名な砂川闘争(1955-1960年代)で行動隊の副隊長・宮岡正雄の娘で今は「砂川平和ひろば」を主宰している福島京子。もう一人は32年前、極北のアラスカ州都ジュノーで取材した被爆体験を英語でアメリカ人に伝える運動「ネバ―・アゲイン・キャンペーン」に参加していた可愛い女の子・中村里美、当時22歳だった。それに里美を応援する現役の女性新聞記者と里美の運動のパートナー、男性ギタリスト。彼は昨年、直腸ガンで手術したが今は顔色ツヤツヤ、元気に回復している。
そうか。多くの見舞い客が心配して来てくださるのは、未だガンは死に至る病、という見方が一般で、のんびりしている自分の方がおかしいのか、と迂闊さを指摘されたような気になった。「間もなく死ぬ」とか「いつか死ぬ」ということと「ガンで死ぬ」ということは同じようで全く違う。「ガンによる死」はまごうことなき現実なのだ。ということからすればもっとぼくは真剣に「死」について考えなければいけないのだろうが、どうもピンとこないな。多くの見舞いのお菓子を前に腕を組んで考えこんだ。むろんメッセージの中には「ガンは最早不治の病でない」とか「ガンは治る」という内容のものも多くある。でも医学の進歩で飛躍的に「延命」はできるようになったのは事実だが「完治」「根治」は今も不可能だそうだ。専門家の間では「ガンは治らない」

いろんなガンに関する本を読むとガンという病気には未解明な部分が広範囲にあり、「ガンは解明された」という書は一冊もないし、そう言明する専門家もいない。深夜目覚めて「死」を考え始めるといろんな文章が次から次へと浮かんでくる。「死」とは「生」の反対概念だが、実は一人の人間にとって同じことなのではないか、と考えている。そう思いつつ眠ってしまった。「生と死」~ぼくの死生観についてはいずれ詳しく書いてみたい。

ガンに関する書を読んでいて一つだけ嫌味で実に不愉快な言葉を見つけた。人間社会が吐き出す汚物を飲まされたような気分となった。「黄金のワラ」という。

ぼくが最も敬愛する先輩のジャーナリスト・筑紫哲也(故人)の闘病メモにあった。1970年代、筑紫が『朝日ジャーナル』の副編集長をしていた時、何度か一緒に仕事をした。ロッキード事件で田中角栄が逮捕された時はバンコックにいたぼくは筑紫に呼び返された。福島県の木村守江知事の汚職事件を追い、菅直人の市民派選挙をルポした。

筑紫はぼくが最も尊敬し、好きで親しみが持てるデスクと言える。柔らかく、よくしなう釣り竿のようだが、決してブレない硬骨の記者だった。威張らない。怒らない。それでいて権力の悪とは決して妥協しなかった。LAで苦労しているぼくを助けてくれたことはいつか詳しく書きたい。カリフォルニアの青空の下、知人宅のジャクージに筑紫と裸で入りふざけ合ったのが昨日の事のようだ。

筑紫の唯一の欠点と言えば希代のヘビー・スモーカーだったこと。やがて肺ガンに蝕まれた。

黄金のワラ~一定のガン治療を施した医師が「これ以上やることがありません」と患者や家族に告げる。はっきり言ってしまえば現代医学でやれることは全てやった。あとどうなるかわからない、お手上げだという極めて不都合、不遜、不合理な宣言である。患者や家族は医者にそう告げられ呆然自失、途方に暮れるしかない。

そこで登場するのが”黄金のワラ”である。患者はワラにもすがりたい気持ちで、「ガンに効く」と言われているものに次から次へと手を出す。それがめちゃ高価なもので、本当に効くかどうかも分からない。患者の弱みに付け込んで売りつけて儲けるのだそうだ。稀に「治った」ものもあるかもしれない。いや、「ある」との話も聞く。手を変え品を変え、患者の前に「これを飲めば治る」「誰それは治って元気にピンピンしている」と患者の前に”黄金のワラ”を並べ立てる。嫌らしい弱みビジネスである。商品名は書かないけれど誰も一つくらい聞いたことがあるだろう。

ガンとは人間の”業(ごう)”のようなものではないか。フト、そう思った。ぼくは黄金なんて持っていないからいいけど。せいぜい大阪・鶴橋の在日韓国人の店で買った4,500円もした朝鮮人参くらいか。


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北岡和義事務所

神奈川県茅ケ崎市在住

E-mail: kazuyoshi.kitaoka@gmail.com

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